私が手に入れたチンクエチェントことフィアット500C(FIAT500C)。セカンドカーとして少ない出動機会の中、メインとなるのが海への移動、サーフィンのお供です。サーフィンを楽しむ人にとってのクルマは、道具を運ぶツールであり、海への道中を共に過ごす相棒。ある日、ズブ濡れのウェットスーツを着たまま、クルマを運転することになってしまったのです。海水で車内を浸すわけにはいきません。さて、どうなる?
波を選ぶ
サーフィンはサーフボードを使い、海岸に発生する“波“に乗るスポーツですね。
一言で“波“と言っても、サイズもカタチも様々。「同じ波は一つも無い」と言われるほど千差万別です。その日その時の波のうねりに、吹き付ける風の強さや方向、潮の満ち引きなど、様々な要素が絡みあい、その、ただ一つの“波“が生れるわけですね。
サーフィンのご経験がある方はご存じの通り、“波“は大きければ良いというものではありません。「今日はイイ波だったなぁ」とニヤニヤするのは、「波のカタチがキレイ」で「波の大きさがちょうど良い」だった時。この二つが揃うと「波に乗りやすい」からです。ただし、この二つ対するモノサシもサーフィンをする人それぞれで千差万別。さらに同じ人間でもコンディション、技術、年齢などにより好みが変わります。だからこそ奥深いスポーツであり、いつまでも飽きずに楽しめるのだと思います。
さて、ある日のこと。私はいつものサーフィン仲間と海に向かいました。サーフィンを楽しむ為に入る場所を“ポイント“と呼びますが、その日に選んだポイントは私たちが頻繁に遊んでいるポイントで、天候の変化に対して“波“が安定していることが特徴です。その日は、海に入る前に陸上からチェックすると、少しサイズは大きいものの「何とか遊べるだろう」と思われる状態でした。
クルマの外でウェットスーツに着替え、サーフボードを抱えて海に入りました。すると、実際のところは波のカタチが良くない。サイズが大きめであることと相まって、波に乗っても、サーフボードの上に立ち上がって早々に、波から振り落とされてしまうのです。サーフィンは、波の力を利用してサーフボードの上に立ちあがった後こそが楽しみです。この状態ではぜんぜん楽しくない。困りました。
「コレは“ポイント“を移動した方が良いね」
ポイントの移動自体は珍しいことではないのですが、基本的に海に入る前に判断し移動します。しかし、今回のように一度海の中に入ってから移動することは多くありません。今回はそれほどまでに波が良くないということです。仲間の意見に同意し、海から上がって別の海岸へ移動することになりました。
移動先の海岸まではクルマで15分程度。移動自体はたいした事ありません。しかし、クルマで移動する為にクリアすべき課題があります。そうです。私は既に頭のてっぺんからつま先までズブ濡れなのです。しかも、ウェットスーツの内側にもたっぷり海水を含んだ状態。
「一度着替えれば良いのでは?」とお思いかもしれませんが、しっかり水を含んだ真冬用のウェットスーツを一度脱いで、再び着るというのは、ものすごく、ものすごく(二度言います)メンドーなのです。着替えに要する時間も数十分はかかる。所要時間としてバカになりません。そうなると「ズブ濡れウェットスーツのままクルマを運転する」しかありません。
シートカバーがあるじゃないか
ココで日頃の行いが福となす。私はサーフボードをクルマの助手席に積んでおり、サーフボードからの水気や汚れでシートを傷めないよう、シートカバーを装着しています。このシートカバー、防汚で防水なのでした。このシートカバーを助手席から運転席へ付け替えれば、ズブ濡れウェットスーツのままクルマを運転しても大丈夫です!
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早速、助手席からシートカバーを取り外しにかかります。このシートカバー、上部に空いたふたつの穴をヘッドレストの“足“に通して固定するタイプです。まずは助手席のヘッドレストを外さなければいけないのですが、コレが意外と大変。足を抜くための“ロック“はバネ式の突起を押し込むという一般的な構造なのですが、コレが右と左どちらにも設けられている。つまり、足を抜くためには左右2カ所のロックを同時に押し込みつつ抜き取らなければならない。だいたいは左右どちらか一カ所ですよね。やりよります、チンクエチェント!
いつもでしたら私、右手と左手でそれぞれロックを解除しつつ、頭でヘッドレストを押し上げるのです。荒業です。しかし、今日はマズイ。頭はビショ濡れ。その水分は、太平洋の塩分を存分に含んだ「ガチ海水」です。さすがにマズイ。
しばし思考停止した私の後ろから、サーフィン仲間が「手伝うよ」と声をかけてくれました。助かった!1人じゃムリだった!私が袖口から海水が漏れ出ないよう気を付けながら左右のロックを解除している間に仲間がヘッドレストを抜き取ってくれました。運転席も同じく友情プレイでヘッドレストを着脱。無事にシートカバーを付け替えることができたのでした。
フロアマットもあるじゃないか
もう一つは足元。ウェットスーツ内に含んだ海水が、くるぶしあたりの裾口から少しづつ漏れてきます。ココにも日頃対策が活きました。ビニール素材のフロアマットです。しかも“土手“付き。
サーフィンではどうしても砂浜近くで乗り降りする為、靴に着いた大量の砂が車内足元へどうしても侵入します。起毛仕上げのフロアマットですと、毎回手入れがメンドーです。ビニール素材のフロアマットを更に敷くことで、侵入した砂はフロアマットごと車外へ出し、裏返して「トントン」すればO.K.です。コレが今回は砂だけでなく、足元へ流れ出る海水をキャッチしてくれるわけです。いやー助かるわー!
シートカバー、フロアマット共に、海水は後からふき取るか車外へポイできますし、残った塩分と汚れも後からカバーごと洗い流せばO.K.。クルマを汚すことはありません。あとは、袖口から漏れてくる海水でステアリングやシフトレバーを濡らさないようにタオル持参で注意するだけ。ズブ濡れウエットスーツでドライブ、問題なしです!
運転席へ乗り込んだ私は、仲間のクルマと連なって次のポイントへ無事に移動。ひとつだけ残念だったのが、幌をオープンにしなかったこと。さすがに走行風で髪についた海水が車内に飛び散ると思いオープン走行は自粛しました。無念・・・。波ですか?良い波でした!楽しめました!
以上、ズブ濡れのウェットスーツによる運転を、日頃の備えが救ってくれたというお話でした。
ガチガチなアウトドア志向のクルマではなくても、備えあれば何とかなるものですね。サーフィンとオープンドライブ。海と空を満喫。これからも欲張りな休日を続けていきたいと思います!